Canada×中卒

カナダで暮らす日本人夫婦から幸せの提案


トロント生活も早2ヶ月が経ちました。
街にも少しづつ慣れ、カナダ人とのシェアハウス生活も充実し、到着したとき驚き転げたネィティブの会話スピードにも少しは順応してきたハズ。

仕事は、1ヶ月前にナイアガラの滝を中心としたツアー会社に転職。
新入社員として、経験豊富で顔色豊かな先輩から手厚い研修を受け、コツコツ働いています。
ただ、ナイアガラの滝周辺のガイドをするには、資格を取らないといけないので、再来週の資格試験に向けボチコサ勉強中。

「ほな、なにしてるの?」

詳しいことはまた書きますが、トロント空港からナイアガラの滝やトロント周辺のホテルへお客様をお連れし、滞在中の工程の案内からチェックインまで。
なので、家はトロントにありながら、週に1〜2はナイアガラの滝近くにある会社の寮にお泊りしています。

その寮は僕以外も宿泊されるが、大半は車持ちなのでいつも1人。

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僕はセキさんを慕っている

そんなある日。
泊りで寮を訪れたら、先輩のセキさんがリビングでビール片手にTVを見ていた。
なんとも日本らしい風景と、寮に人がいることにドキン!とした。
挨拶をした僕に、振り向き、満面の笑みで返事してくれたセキさんが持っているビールは375mlビール瓶で、見ていたTVはカナダ特有の天気予報だの交通事情だのニュース速報だのが1つの画面に収まっている、ゴチャゴチャしているものだったので、ここはカナダだと再認識した僕は荷物を部屋に置いて、ササッとお風呂に入り、セキさんのお隣にお邪魔してビールで乾杯。

セキさんは推定47歳。
ふと、セキさんの実年齢を知らないことに今気づく。
カナダでは年齢を聞くと失礼になることが多く、僕もあまり聞かれないし、面接時でも聞かれなかった。
セキさんは25歳の頃、奥さんとカナダに渡航し、就労ビザを取り、トロントで2人の子宝に恵まれた。
カナダに渡航してからは一貫して旅行業に携わっているらしく、カナダ生活22年目。
なので推定47歳。

僕はセキさんを慕っている。
身長160cm前後と小柄で、いつも笑顔ながら指導は的確で明快。
親しみやすいが、いつもお腹のポッケに手をツッコミ、人と一定の距離感を保つ。だけど人を不快にさせないし深入りもさせない。

他の先輩ガイドさんも一目置くほどの仕事っぷりで、僕もセキさんのガイドに同行したこともあり、そのガイディングはお客さんに毒づかない綾小路きみまろ。

口癖ガイディングは「女性がた。」

「今日は女性がたが多いので、ちょっとこれを紹介しますね〜。」
「女性がたは必ず滝に行ったらマイナスイオンで若返ってきてくださいね〜。」

ちょっとおネイな喋り方が特徴のセキさんは、観光スポットでは欧米人ばりに身振り手振りを激しく使い紹介する。
お客さんはその姿に、日本から13時間の移動をものともせず、いつも笑ってる。

僕もセキさんのガイディングが大好き。
そんなセキさんは、無類のビールと家族好き。

ビールの飲みすぎ?で痛風になった経緯があるにもかかわらず、1日最低6本はビールを飲むらしいセキさんは、僕がリビングでビールを開けたら、
「じゃあ、あらいさん来たからもう一本だけ飲もうかな。」
とテーブルの上には大量の空き瓶を片付けながらもう一本開けた。

実はこれまで、セキさんと込み入った話はしたことがない。
いつも車を運転されているので仕事帰りの一杯ができず、仕事の合間に話すことも、仕事のことが中心になっていたからだ。

しかしこの日は2人とも寮に泊まり。
セキさんが買いだめしている大量のビールをご馳走になりながら、仕事の話を皮切りに2人の共通点へ話は移っていった。

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なぜ夫婦でカナダに来たのか

セキさんが奥さんと出会ったのは大学生の頃。
大学卒業後は日本に住んでいる人なら大半が知っている会社へ就職し、その後結婚。

当時は1990年代後半。
バブルが終わったとはいえ、高度経済成長を支えた精神論をそのままに、サービス残業という言葉もなく残業は当たり前。
終業後は日本特有の飲みコミュニケーションが連日、連夜だったそうだ。

無類のビール好きであるセキさんは、上司がウイスキーを飲めば部下はそれに習わなければならないことや、
その場の勘定をした上司に部下は頭を下げるが、その勘定は紙になり、会社に渡って経費として落ちる、というサイクルに

「はっ?!なんやこの茶番。」

と思ったらしい。

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さっちゃんと居たかった

仕事関係の拘束時間が増えていくのと同時に、お盆や正月の親戚周り。
それに伴って、年賀状やお中元など、しなければいけないとされる社会的風習も増えていったと。

「僕はね、さっちゃと居たかったんだよ。」

奥さんの名前は”サツキ”さん。
セキさんは奥さんのことを今も変わらず

さっちゃん

と呼んでらっしゃるそうだ。

奥さんと過ごす時間が減っていくことがなによりの苦痛だったと話すセキさんは、当時を思い出したのか、少し寂しげな顔で、そっと呟かれた。

セキさんとサツキさんは、現状を打開するため話し合い、前から興味があった海外生活に挑戦することを決意。

その決意は
「絶対に日本に戻らない!」
というほどの強いものだったそうだ。

渡航先をカナダにしたのは、とてもシンプル。
当時は世界地図を広げるまでもなく、ワーホリビザがオーストラリア、ニュージランドそしてカナダしかなく、オーストラリアへ旅行経験があったセキさんは、そこでの生活はイメージできなく、半ば消去法でカナダへ。
しかし、カナダを調べれば調べるうちに、ここしかない!という思いを強くしていったそうだ。

その理由はこんな感じだ。

  1. 国が若く、社会的活力がある
  2. 移民が多く、受け入れられる土壌が広い
  3. 個人を尊重し合う風土があり、日本とは真逆

幸せに対する1つの提案

セキさんは一年に一度、ご両親に子どもを会わせるために日本へ2週間ほど帰られる。
誤解して欲しくないのは、決して日本が嫌いなわけではない。

例えば、セキさん家では英語は一切禁止にしているそうだ。
子どもたちに日本を大切にしてほしいと。

だけどセキさんは言う
「カナダや海外で暮らすというのは、”幸せに対する1つの提案”だと思っている。どこにいっても習慣や、風習はある。だから探せばいいんじゃないかな。自分たちが幸せだと思える生活を。」

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誰も聞いてこない”あのこと”

僕たちあらい夫婦もカナダへ来て、2人でご飯を食べる時間が増えた。
外食が高いことや、日本ほど知り合いがいないから機会が減ったことはもちろんだが、それを逆に取ると、夫婦で居られる時間が増えたことには間違いない。

最近はもっぱら、トロントがあるオンタリオ州産のワインとビールを日替わりで変えながらの夕食。
間違いなく出会ってから5年、結婚して3年の中で、2人の時間を過ごせている。

だからと言って、仕事をぼちぼちしているわけではない。
これまでと変わらず、熱意を持って仕事している。

そして、なによりこっちに来てから”あのこと”を誰にも聞かれない。

それは、”子作りについて”
子どもがいるかいないかは聞かれるが、子作りについてはまったく、一度も聞かれたことがない。

結婚してからの3年間、嫌というほど聞かれた。
その度に思う
「ほっとけよ。鳥が飛んで来ないだけや!!」

カナダの人は他人に興味がないのではない。
それは個人、夫婦のことで、他人がとやかく言うことではないという認識がある。
個人をとても尊重している。

ガイドはエンターテイナー!

ビールを片手に、満面の笑顔で仕事への誇りと家族への愛を語ってくれたセキさん。

お客さんと接するときに心掛けていることがあると。
それは、誰でも伝わる言葉でガイディングすることそして、

「でもね、ガイドはエンターテイナーじゃないと!」

そこには、はるばる日本から13時間かかるトロントを選んだお客さんの思いを想像して、1分1秒でも快適に、楽しく過ごせるようにしたいというセキさんの思いが込められている。

セキさんは今、LGBTQに興味があるそうだ。
その根底にあるのは
「どうだっていいじゃん!男だの女だの、誰が誰を好きになろうがなるまいが、決めつけるなよ。」

カナダは同性婚が法律で認められており、街を歩いているとLGBTQの人たちに出会う。
しかし、綺麗事ではなくこの街にも偏見はある。
だから興味を持ったのだと。
そしていつか、カナダらしさとしてお客さんにLGBTQについてガイディングしたいのだと。

結局この日は、もう一本、もう一本とスタートから3本ご馳走になった。
「ありがとう。」
そう優しく会釈してくれたセキさんは、両手をお腹のポッケに突っ込むいつものスタイルで部屋へ帰って行った。

カナダに来て、カナダに住む日本人に出会えることはなぜか想像していなかった。
幸せの提案。
カナダlife満喫しています。

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